アスリート密着取材にかける思い プロデューサー、武藤靖さん
荒い息遣いに頬を伝って落ちる汗。歓喜の雄たけびに落胆の吐息。戦いの場を離れたアスリートが、安らぎのひと時に見せる穏やかな笑顔。テレビカメラが捉える噓偽りのない一挙一動が、ドキュメンタリー番組の命綱だ。 番組制作プロデューサーの武藤靖さんは、各競技を代表するアスリートに文字通り「密着」し、その素顔を視聴者に届けてきた。カメラを回しながら、何を思い、何を伝えようとしているのか。カメラには映らない苦労など番組制作の裏側や、番組にかける熱い思いなどについてうかがった。 ■武藤靖(むとう・やすし) 昭和1969(昭和44)年生まれ。90年にテレビ制作会社「テレビマンユニオン」に入社。民放やNHK…
移籍の経験「マイナスではない」 野球解説者・荒木大輔さん
プロ野球はシーズンオフに入り、選手たちの移籍に関する報道もたくさん出ている。フリーエージェント(FA)による大型契約での移籍やトレード、最近では米大リーグへの移籍を目指すことも珍しくなくなった。 自身もドラフト1位で入団したヤクルトから現役最終年に横浜(現DeNA)に移籍したプロ野球解説者の荒木大輔氏が、移籍によるプラス面や選手の心情などについて語った。(聞き手・田中充) ■荒木大輔(あらき・だいすけ) 1964(昭和39)年、東京都生まれ。野球解説者。早実高時代の1980年夏、1年生ながら甲子園で準優勝し、「大ちゃんフィーバー」を巻き起こす。1983年ドラフト1位でヤクルトに入団。9…
〝キャップナンバー1〟が語る草創期 元ラグビー女子日本代表・岸田則子さん
今年8月、東京・秩父宮ラグビー場で、国際試合に出場した歴代女子日本代表選手の功績をたたえるキャップ授与式が行われた。15人制で〝キャップナンバー1〟となったのは、日本協会に女子部門がない時代から競技の普及や発展に尽力してきた岸田則子さんだった。 岸田さんに草創期の苦労やこれまでの歴史などを聞いた。(聞き手・橋本謙太郎) ■岸田則子(きしだ・のりこ) 1946(昭和21)年3月生まれ、東京都出身。37歳だった83年に世田谷区の講習会に参加後、ラグビーを本格的に始める。88年には日本女子ラグビー連盟を設立し、専務理事に就任。女子ラグビーの普及に尽力するとともに、プロップとして91年の第1回ワ…
トレーナー目線でW杯スペイン戦占う The StadiuM社長・山田晃広さん
サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の「森保ジャパン」は日本時間12月2日、1次リーグ最終戦のスペイン戦に臨む。 スペイン1部リーグ、リーガ・エスパニョーラのラシン・サンタンデールで成功を収め、女子日本代表「なでしこジャパン」だった澤穂希さんや大野忍さんのコンディショニングを担当するなどした「The StadiuM」(ザ・スタジアム)社長の山田晃広さんに、スペイン選手気質などを聞いた。監督、選手と身近に接するトレーナーでしか知りえない心の動きなどを語ってもらった。(聞き手・北川信行) ■山田晃広(やまだ・みつひろ) 昭和49年生まれ。高校卒業後、大手スポーツマッサージ治療院に入社。…
「誰もが参加」のため投資を 笹川スポーツ財団常務理事・玉沢正徳さん
スポーツへの関わり方は多様だ。「する」「みる」「ささえる」。それぞれの立場でスポーツを楽しむ人がいて、互いの価値観を認め合える社会は理想的だ。友情や尊敬、健康や長寿など、人生を豊かにする多くのものを、私たちはスポーツから享受している。 スポーツに対価を払うこと、普及や振興に公金を投じることには意味がある。そのような見地から「スポーツの価値」を説き、政策提言を行っているのが笹川スポーツ財団(SSF)だ。 発足から31年あまり。スポーツ団体への助成やボランティア養成、国民のスポーツライフに関する調査・研究など、多岐にわたるSSFの歩みと今後の展望について、常務理事の玉沢正徳さんに聞いた。…
レフェリー目線でのカタールW杯の楽しみ方 元サッカー審判員・奥谷彰男さん
サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の開幕まで1カ月を切った。7大会連続7度目の出場となる日本代表がどこまで勝ち進めるかに注目が集まるが、大会の見どころはほかにもたくさんある。 史上初の女性審判員として選出された山下良美さんはどの試合で笛を吹くのか、人工知能(AI)を用いたオフサイド判定の半自動化をはじめとしたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)導入の影響は…。もはや伝説の「神の手ゴール」が再び生まれる余地はないのだろうか。 審判目線でのW杯の楽しみ方を日本サッカー協会1級審判インストラクターで昇陽中学、高校サッカー部総監督の奥谷彰男さんに聞いた。審判目線を知れば、W杯の見方…
東京デフリンピックで理解広がれ 全日本ろうあ連盟本部事務所長・倉野直紀さん
聞こえないアスリートが集い、世界一を争う「デフリンピック」が2025(令和7)年の秋に東京で開かれる。会期は11月15日から26日までの12日間で、約80の国・地域から約5000人の参加を想定しているという。 夏季大会は1924年に第1回が開かれ、東京で迎える第25回大会は「デフリンピック誕生100年」の節目に当たる。パラリンピックより歴史のある大会にもかかわらず、日本での認知度はまだ高くない。開催準備に忙しい全日本ろうあ連盟理事・本部事務所長の倉野直紀氏に、大会開催の意義やデフスポーツの魅力について聞いた。(聞き手・森田景史) ■倉野直紀(くらの・なおき) 1972(昭和47)年、…
柔道着や畳を世界に贈る JUDOs事務局長・鈴木利一さん
世界各地へ柔道普及を目指す活動を続ける特定非営利活動法人「JUDOs(ジュウドウズ)」。シドニー五輪で柔道男子100㌔級金メダリストで、男子の日本代表監督も務めた井上康生氏が代表理事を務め、これまでに約20カ国に日本で使わなくなった約7500の柔道着と1000枚の畳を無償で届けてきた。 エベレストの麓の村や、ロシアの侵攻から逃れたウクライナの人たちのもとへ―。鈴木利一事務局長に、柔道を通じた国際貢献に取り組むJUDOsの活動や思いについて聞いた。(聞き手・田中充) 鈴木利一(すずき・としかず) 1987(昭和62)年10月、高知県出身。JUDOs事務局長。東海大大学院体育学研究科体育学専…
東京五輪副審が語るKARATEの魅力 空手・阿部夕姫選手
空手の国際審判の資格を持つ阿部夕姫さんは昨夏の東京五輪でもアシスタントレフェリーを務めた経験を持つ。全日本空手道連盟公認6段の腕前を持ち、現在も現役としてスポーツマスターズなどに出場する阿部さんに空手の魅力を聞いた。 日本発祥の空手は今や世界に広がる。阿部さんは「空手の動きや道着などが日本文化を連想させることで、外国人の関心を高めたのではないか」と語った。 (聞き手・田中充) 【阿部夕姫(あべ・ゆうき)】1978年、札幌市生まれ。世界空手道連盟の国際審判資格を持つ。全日本空手道連盟公認6段。小学1年から空手をはじめ、現在は空手スクール運営などを手掛ける株式会社「強者」に所属。国内外の選…
選手経験生かしパリ五輪にトライ ラグビー審判・桑井亜乃さん
選手としてグラウンドに立った五輪に、今度はレフェリーとしての出場を目指している人がいる。ラグビー7人制女子で2016年リオデジャネイロ五輪に日本代表として出場した桑井亜乃さんだ。 ターゲットは2年後のパリ五輪。国内だけでなく海外の大会にも積極的に出かけて技術向上を図る桑井さんに、レフェリーを目指した理由や武者修行の日々、五輪の魅力などを聞いた。(聞き手・橋本謙太郎) ■桑井亜乃(くわい・あの) 1989(平成元)年10月生まれ、北海道幕別町出身。帯広農業高や中京大では陸上の円盤投げの選手として活躍。その後、ラグビーを本格的に始め、立正大大学院に進学。FWとして7人制女子日本代表で活躍し、…